共有不動産の共有持分権を放棄することで共有関係から離脱することができた事案


<事案の概要>

 依頼者は,東京都生まれの越谷市に在住している女性です。数十年前に父母が亡くなった際,依頼者を含む兄弟姉妹6人で父母の遺産だった不動産を相続しました。以後,その不動産は,今日に至るまで6人の共有となっていました。

 相続発生直後は特段問題なかったのですが,時間の経過とともに6人の考え方に違いが生まれ,不動産の管理について意見が対立することも増えたため,依頼者としては,この共有関係から離脱したいと考えるようになりました。

 そこで,この共有関係から離脱する方法を相談するため当事務所にご相談にみえました。複数回の法律相談を経た後,当事務所弁護士が交渉事件として受任しました。



<解決に至るまで>

 不動産の共有関係から離脱する方法を検討したところ,⑴共有物分割請求を行う,⑵共有持分権を適正な価格で買い取ってもらう,あるいは⑶共有持分権を放棄する,などの方法が考えられます。

 依頼者との間で綿密な打合せを行ったところ,依頼者としては,自身の共有持分に相当する不動産を手放したくない,共有から離脱する代わりに金銭的な補償を獲得したい,といったことは希望しておらず,とにかく共有関係から確実に離脱したいという強い意向をお持ちでした。

 そうすると,上記⑴⑵の方法では,他の共有持分権者の意向が影響することや,必ずしも依頼者の意向に沿う結果となるとは限らないことから,今回は上記⑶の方法を選択することにしました。

 まず,共有持分権を放棄する旨の意思表示を行う必要がありますので,相手方らに対し配達証明付内容証明郵便にて通知しました。この方法によれば上記意思表示を行ったことを裁判において証明することができます。そして,この意思表示が相手方らに到達することによって,法律上,依頼者の有する共有持分権は放棄されたことになり,共有関係から離脱することになります。

 しかし,問題は,そのことを登記に反映させなければならないという点です。つまり,問題となっている不動産の現在の所有者(共有者)として依頼者の名前がでてこないようにする必要があるのです。この登記手続には,相手方らの協力が必要になり,その他諸費用も必要となります。

 相手方らと幾度か交渉を重ねましたが,最終的に,相手方らは,この手続きへの協力を拒否したため,やむをえず,東京地裁に民事訴訟を提訴しました。訴訟は,登記引取請求というもので,裁判実務では比較的珍しいものになりました。この訴訟の意味は,簡単にいえば,相手方らが任意に登記を引き取ろうとしない場合,法律の力で,強制的に登記を引き取らせるというものです。

 最終的に当方の主張を全面的に認める内容の和解が成立し,事件は終了となりました。裁判終了後,登記手続も無事行われ,依頼者は,目標であった共有関係から離脱することに成功したのです。

※共有持分権の放棄を行うと税法上はみなし贈与と扱われることが多く事案によっては贈与税などの税金が課税されることになりますので注意が必要です。
 


<解決のポイント>

・煩わしい親族間の人間関係を避け,共有関係から離脱することができたこと
・不動産事件に詳しい弁護士に依頼することで複雑な問題が伴う不動産の共有問題を解消することができたこと。




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